「お風呂には入っちゃダメですか?」 「次の受診まで、ずっと貼りっぱなしでいいですか?」
傷を縫ったあと、外来でとてもよく聞かれる質問です。
縫ってもらった日はけがのショックもあって、説明を全部覚えておくのは大変です。家に帰ってから「あれ、どうするんだっけ」となるのは、ごく自然なことです。
そして、抜糸が終わると「これで治った」とほっとして、傷のことを忘れてしまう方も多いのではないでしょうか。実は抜糸のあとにこそ気をつけてほしいことがあります。
前回の記事では、すり傷を「洗って潤して治す」湿潤療法の話をしました。今回は縫った傷の話です。後半では意外と知られていない「抜糸のあとの日焼け」の話をします。特にお子さんのいるご家庭にはぜひ読んでいただきたい内容です。
縫った傷は「工事中の道路」

縫った傷は、見た目はぴったり閉じていても、中ではまだ工事が続いています。
たとえるなら、ひび割れた道路を仮止めのボルト(糸)で留めてその間にアスファルトを流しこんで固めているような状態です。糸は皮膚どうしがくっつくまでの「仮止め」の役目をしています。
縫ってから1〜2日たつと、傷の表面はうすい膜でふさがってきます。ここから先は少しずつ中の工事が進んでいく段階です。
シャワーはいつから?
私は縫った翌日から、シャワーでやさしく、でも十分に洗い流してくださいとお伝えしています。
「縫ったところを濡らして大丈夫なの?」と思われるかもしれません。でも、汗や汚れがたまっているほうがかえって傷にとってはよくありません。シャワーは避けるものではなく、むしろ傷を洗うよいチャンスです。
ただし、医療機関によって、また傷の場所や深さによって指示はさまざまです。「抜糸まで濡らさないで」と言われることもあります。ですから、縫ってもらったところの指示に従うのがいちばんです。わからなくなったら、遠慮なく電話で聞いて構いません。
「お風呂に入っちゃダメ?」
冒頭の質問への、私自身の答えです。
私は湯船につかるのは抜糸が済んでからにしてくださいとお伝えしています。はっきりした決まりがあるわけではありませんが、傷がしっかりくっつくまでは念のため、という考えです。
シャワーで洗うときのコツ
シャワーで洗うときは、こんなふうにします。
- 石けんをよく泡立てて、泡をのせるようにやさしく洗う
- 傷をこすらない
- シャワーで泡をしっかり流す
- 清潔なタオルで押さえるように水気をふく
「糸のところを洗うのはちょっと怖い」と感じるかもしれませんが、やさしく洗えば大丈夫です。
「貼りっぱなしでいい?」
もうひとつの質問、「次の受診までずっと貼りっぱなしでいいですか?」への私の答えは、基本的には1日1回、はがして洗って貼りかえてくださいです。ただし、防水のフィルムや傷を閉じるテープ・接着剤を使った場合は、はがさないよう指示されることもあります。その場合はそちらに従ってください。
シャワーで洗ったタイミングで新しいガーゼや絆創膏に貼りかえると、手当てがひと通り済みます。
抜糸はいつ?場所によって違います
気になるのが、抜糸の時期です。実は体の場所によって目安の日数がかなり違います*1。
| 傷の場所 | 抜糸の目安 |
|---|---|
| 顔 | 3〜5日ほど |
| 頭 | 7〜10日ほど |
| 腕 | 7〜10日ほど |
| 胸・おなか・背中 | 10〜14日ほど |
| 脚 | 10〜14日ほど |
| 手の甲・足の甲 | 10〜14日ほど |
| 手のひら・足の裏 | 14〜21日ほど |
顔は血の巡りがよく早くくっつくので、糸のあとが残らないよう早めに抜きます。逆に、手のひらや足の裏は皮膚が厚く、物をつかんだり体重がかかったりして傷に力がかかりやすいため、長めに糸を残します。また、関節の上の傷も動かすたびに引っぱられるので長めに残すことがあります。
あくまで一般的な目安なので、実際の日数は傷の状態を見て決まります。
最近は医療用の接着剤・テープで傷を閉じることもあります。自分の傷がどれなのか、縫ってもらったときに確認しておくと安心です。
抜糸が終わっても、傷はまだ「工事中」
ここが今回いちばんお伝えしたいところです。
抜糸が終わると「治った!」と思いがちですが、傷あとが落ち着くまでには、数か月〜1年ほどかかります。 抜糸のころの傷あとは、いわば「アスファルトがまだ柔らかい道路」。表面は通れても、中はまだ固まりきっていません。
この時期の傷あとは少し赤く、盛り上がって見えることがあります。多くは時間とともに赤みが引き、白っぽく平らになっていきます。
この「固まりきるまでの時期」に気をつけたいことが、2つあります。

① 日焼けをさせない
できたばかりの傷あとは紫外線の影響を受けやすい状態です。この時期に日焼けをすると、傷あとが茶色っぽく色づいて、それがなかなか消えないことがあります。
皮膚に小さな傷をつくり、治ったあとに紫外線を当てたグループと当てなかったグループを比べた研究では、紫外線を当てたほうが色が濃く、目立つ傷あとになったと報告されています*2。
気をつけたいのは、顔・腕・足など、服から出ているところの傷です。服で隠れるところや、髪に隠れる頭の傷であれば、比較的心配は少なめです。
そして特に気をつけてほしいのが、お子さんです。外遊びやプール、運動会、海……。大人よりずっと長い時間を外で過ごしますし、顔やひざ、腕など、日の当たるところをけがしやすいからです。私もお子さんの抜糸のときには、親御さんにこの日焼けの話をしています。
日焼け対策の例です。
- 服や帽子で隠す
- 傷あとの上に、光を通しにくい遮光性のテープを貼る(次の②も兼ねられます)
- 傷がしっかり閉じてから、日焼け止めを塗る
遮光性のテープはドラッグストアなどで手に入ります。私は「1つ買っておけば安心ですよ」とお伝えしています。
どのくらいの期間続けるかの目安は、傷あとの赤みが引くまで。数か月から1年ほどかかることもあるので、夏をまたぐ場合は特に意識してみてください。
② 傷あとを引っぱらない
もうひとつは、傷あとが引っぱられないようにすることです。
まだ柔らかい傷あとは引っぱられる力がかかり続けると、幅が広がったり赤く盛り上がったりしやすくなります。
そこで役立つのが、傷あとに沿ってテープを貼っておく方法です。テープは、ドラッグストアで手に入る肌にやさしい医療用テープで大丈夫です。ただ、人によってはかぶれることもあります。赤くかゆくなったら使うのをやめて相談してください。
テープを貼るかどうか、どのくらい続けるかは、傷の場所や体質によっても違います。抜糸のときに「テープは貼ったほうがいいですか?」と一言聞いてみるのがおすすめです。
気になる変化があれば、遠慮なく相談を
縫ったあとの傷はたいていは順調に治っていきます。ただ、
- 傷のまわりの赤み・腫れが広がってくる
- 痛みが日に日に強くなる
- 傷から膿のようなものが出る
- 傷が開いてくる
といった変化に気づいたら、抜糸の日を待たずに縫ってもらった医療機関に相談してください。そのほかにも、心配なことがあれば「こんなことで電話していいのかな」と思う必要はありません。
今日からできること
全部覚えなくて大丈夫です。まずは1つだけ。
縫ってもらったら、「シャワーはいつから?」「抜糸はいつ?」「抜糸のあとは何に気をつける?」の3つを聞いて、メモしておいてください。
そして、抜糸が終わっても「傷はまだ工事中」。特にお子さんの傷は、次の夏まで日焼けから守ることを意識してみてください。
参考文献・引用元
本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
【参考ガイドライン】
- 日本皮膚科学会『創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―1 創傷一般(第3版)』
【引用文献】
*1 部位ごとの抜糸の目安:Forsch RT, et al. (2017) Am Fam Physician. [AFP]
*2 傷あとに紫外線を当てると見た目が悪化することを示した研究:Due E, et al. (2007) Acta Derm Venereol. [PubMed]
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございます。
2回にわたって「傷の手当て」の話をしてきました。
すり傷でも、縫った傷でも、私がいちばんお伝えしたいことは同じです。
とにかく、しっかり洗ってください。
消毒するよりも、乾かすよりも、まず洗う。傷を治しているのは自分の体で、その力をじゃましないように手助けする、というのが今の手当ての考え方です。洗うことはその手助けのいちばんの基本です。
これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

