【医師が解説】やけどしたら、まず流水で20分|痛みと治りを左右する「最初の冷やし方」

記事タイトル画像「やけどについて まずは流水で20分」。蛇口から水が流れ落ちている写真。 皮膚科
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この記事はやけどの手当てについての理解を深めていただくことを目的としています。やけどの深さや広さによって、適した手当ては異なります。気になるやけどはご自身の判断だけで済ませず、医療機関で相談してください。

最終的な治療方針は、必ず主治医とよく相談の上で決めてください。この記事が主治医との会話をより実りあるものにするきっかけになれば嬉しいです。

「冷やしたほうがいいですか?」 「とにかく痛くて仕方がないんです」

やけどで受診された方から、よく聞く言葉です。最初の質問への答えは、迷わず「はい」です。

ところが外来で診ていると、しっかり冷やしてから来てくださる方は体感で半分くらいです。残りの半分は冷やさずにそのまま来られたり、冷やしたけれど5分ほどでやめてしまっていたり、ということがよくあります。

2つめの「痛くて仕方がない」、もちろん痛み止めはお出しします。ただ、痛み止めだけでやけどの痛みをすっかり取るのは難しいのが正直なところです。痛みをやわらげるのに大きく効いてくるのは、最初にどれだけしっかり冷やせたかと、そのあと傷をどう覆うかです。

「傷の手当て」シリーズ第3回の今回は、やけどの話です。第1回のすり傷の記事で「自分だけで手当てしないほうがいい傷」に挙げた、あのやけどです。

伝えたいことはひとつだけ。やけどをしたら、まず冷やしてください。

やけどは「熱が皮膚の奥へ進んでいくけが」

熱いお湯や油、アイロンなどに触れると、皮膚に熱が伝わります。やっかいなのは、熱源から離れたあとも皮膚にこもった熱がしばらく奥へ奥へと進んでいくことです。

たとえるなら、フライパンで焼いたステーキです。火を止めても、お肉の中には余熱でじわじわ火が通っていきますよね。やけどをした皮膚の中でもこれと似たことが起きています。

だから冷やすのは、ただの痛み止めではありません。皮膚の奥へ進もうとする熱を止めて、やけどが深くなるのを食い止めるためなのです。

実際に子どものやけどを調べた海外の研究で、流水でしっかり冷やしてから来た子どもは皮膚の移植(植皮)が必要になる割合が約4割少なかったと報告されています*1。入院や手術が必要になった子も少なかったという結果でした。

まず冷やす:やり方のポイント

やけどの応急手当てをまとめたイラスト。「やけどしたら、まず流水で20分」の見出しと、蛇口の流水に手を当てる様子、20:00を示すタイマー。下に注意点「氷は直接当てない」「指輪は早めに外す」「冷やしすぎ注意」。

水道の流水で、20分くらいを目安に

冷やすのは、水道水の流水がいちばん手軽で確実です。 

「どれくらい冷やせばいいですか?」もよく聞かれる質問です。実は何分冷やせばいいかは、はっきりとは決まっていません。国際的な救急・応急手当ての専門家の検討でも、冷やす時間については「何分が正解」とまでは示されていません。日本の消防や自治体の案内でも「15〜30分」と幅があります。

そのうえで、私は外来で「20分くらい」とお伝えしています。

5分ではまだ足りないことが多い一方で、長く冷やせば冷やすほどよい、というわけでもありません。あとで触れるように冷やしすぎて体が冷えてしまうのも困るからです。

「20分って長いな」と思われるかもしれません。時計やスマートフォンのタイマーを使うと、意外と短く感じるはずです。

氷や保冷剤を直接当てない

「早く冷やしたいから氷で」という気持ちはよくわかります。ですが、氷や保冷剤を直接当てるのはおすすめできません。冷たすぎて皮膚がさらに傷んだり、皮膚にくっついてしまったりすることがあります。

「キンキンに冷やす」より、「ほどよく冷たい水を、しっかり長く」です。

服・指輪・腕時計

  • すぐに脱げる服や腕時計・アクセサリーは外す:熱いお湯がしみこんだ服は熱を持ち続けます。
  • 指輪は腫れてくる前に外す:やけどをした手や指はあとから腫れてきます。腫れてからでは外れにくくなります。
  • 皮膚にくっついた服は無理にはがさない:そのまま服の上から水をかけて冷やしてください。

小さなお子さんは「冷やしすぎ」に注意

子どもは大人に比べて体が小さいぶん、体温が下がりやすいという特徴があります。全身にシャワーをかけ続けたり、冷たい水のお風呂につけたりすると体全体が冷えてしまうことがあります。

冷やすのはやけどをした部分だけにして、ほかの部分はタオルなどで包んで温かく保ってあげてください。くちびるの色が悪い、ふるえている、といった様子があれば冷やしすぎのサインかもしれません。

「痛くないから軽い」とは限らない:やけどの深さ

やけどは、皮膚のどのくらい深いところまで傷んだかで分けられます。

深さ見た目治るまで傷あと
I度赤くなるだけ。ヒリヒリ痛い数日残らない
浅いII度水ぶくれができる。水ぶくれの底は赤く、痛い1〜2週間一般には残りにくい
深いII度水ぶくれができる。底は白っぽく、さわっても感じにくい3〜4週間残りやすい
III度白や茶色で革のよう、または黒く焦げている。痛みをほとんど感じない1〜3か月以上。皮膚の移植が必要なことも残る

この表で注目してほしいのは、深いやけどほど痛みを感じにくくなるという点です。皮膚の奥にある、痛みを感じるセンサー(神経)まで傷んでしまうためです。

つまり、「あまり痛くないから、たいしたことはない」とは限らないのです。

やけどの深さは専門家でも最初の見た目だけでは判断が難しく、数日たってからはっきりしてくることもあります。見た目や痛みだけで自分で判断せず、心配なときは医療機関で相談してください。

また、やけどの広さは「手のひら1枚分(指も含む)が、体の表面の約1%」というのがひとつの目安です。医療機関ではやけどの深さと広さの両方を見て、手当ての方針を考えています。

水ぶくれは、自分でつぶさない

やけどでできた水ぶくれ。つぶしたくなる気持ちはよくわかります。

ですが、水ぶくれの薄い皮はその下の傷を細菌や乾燥から守ってくれる、天然のばんそうこうのような役割をしています。ですから、自分でつぶさないでください。

一方で、気をつけていても水ぶくれが自然に破れてしまうことがあります。そのときは、破れてしまった皮は取り除くように私はお伝えしています。破れてしぼんだ皮をそのままにしておくと細菌が増えやすくなるためです。はがれてしぼんだ部分だけを清潔なはさみで切る程度にして、くっついている皮を無理に引っぱってはがさないでください

取り除いていいのか迷うとき、やり方に不安があるときは、無理をせず医療機関で相談してください。

医療機関での水ぶくれの扱いは、やけどの状態によって変わります。そのまま残すこともあれば、中の液を抜いたり、皮を取ったりすることもあります。

冷やしたあとは「空気に当てない」

しっかり冷やしたら、次は傷を覆う番です。

基本の考え方は、第1回のすり傷の記事でお話しした湿潤療法と同じです。ワセリンを塗って、ガーゼで覆う。これで傷の潤いを保ちます。

もうひとつ、外来でよくお伝えしているのが、空気に当てないようにするだけで痛みが楽になるということです。冒頭の「痛くて仕方がない」への答えは痛み止めよりもまず、しっかり冷やすこと、そして覆うことなのです。

貼りかえの考え方も、すり傷と同じです。 → 【医師が解説】すり傷、消毒してかさぶたで治す…は昔の話?|「洗って、潤して治す」湿潤療法の基本

今日からできること

いきなり全部覚えなくて大丈夫です。まずはこれだけ。

「やけどをしたら、まず流水で20分。」

痛み止めよりも、塗り薬よりも先に、まず冷やす。それだけでその後の痛みや治り方が変わってきます。

参考文献・引用元

本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【参考ガイドライン】

【引用文献】

*1 流水での冷却が子どものやけどの植皮を減らしたとする研究:Griffin BR, et al. (2020) Ann Emerg Med. [PubMed]

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

3回にわたって「傷の手当て」の話をしてきました。すり傷や縫った傷では「とにかく洗う」、そしてやけどでは「とにかく冷やす」。どれも特別な道具はいらず、水道の水があればできることです。

やけどは台所でもお風呂でも起こります。「冷やしたほうがいいですか?」と迷う時間があったら、まず蛇口をひねってください。しっかり冷やしてから来ていただけると、私たちとしてもとても心強いです。

今回は詳しく触れられませんでしたが、小さなお子さんのやけどの予防(電気ケトルやポット、炊飯器の蒸気など)も、いつか改めて取り上げたいと思っています。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

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