【医師が解説】健診の結果、ちゃんと見ていますか?|検査値の「読み方」をざっくり知ろう

ヘルスメンテナンス

この記事は健康診断の検査値についての理解を深めていただくことを目的としています。検査値の意味やその後の対応を、ご自身だけで判断することは避けてください。

最終的な検査や治療の方針は、必ず主治医とよく相談の上で決めてください。この記事が主治医との会話をより実りあるものにするきっかけになれば嬉しいです。

「健診の結果が届いたけど、よくわからないからとりあえず引き出しにしまった」

「HとかLとかついてるけど、何がどうヤバいのかわからない」

こういう方、実はとても多いです。アルファベットと数字がずらっと並んでいて、まるで暗号みたいですよね。

でも、あの紙にはあなたの体の「今の状態」が詰まっています。全部を完璧に理解する必要はありません。この記事では、「ここだけ見ておけばとりあえず安心」というポイントに絞ってお話しします。

なお、健康診断とがん検診は別のものです。「毎年健診を受けているから大丈夫」と思っていた方は、がん検診、結局どれを受ければいいの?もあわせて読んでみてください。

まず知っておきたい:「H」と「L」の意味

健診の結果用紙には数値の横に「H」や「L」のマークがついていることがあります。

  • H(High)=基準値より高い
  • L(Low)=基準値より低い

「Hがついている、異常だ」と慌てる方もいますが、HやLがついている=すぐに病気、というわけではありません。

ここは少し丁寧にお話しさせてください。基準値というのは「病気とそうでないものを分ける線」ではなく、健康な人の大多数が収まる範囲として決められたものです。健康な人でも一定の割合はこの範囲から外れます。項目の数が多ければ多いほど、どれか1つくらいは外れるほうがむしろ自然です。

もうひとつ知っておくと役に立つのが、基準値と治療の目標値は別物だということです。すでに治療を受けている方の目標値は年齢や持病によって一人ひとり違います。「基準値に入っていないから薬を増やすべきだ」と自己判断はなさらないでください。

大事なのは、「どの項目に」「どのくらい」ついているかです。

1回の結果より、去年との比較

そして、実はここがいちばん大事かもしれません。

1回の結果よりも変化の流れを見ることのほうが重要です。

同じ「基準値をわずかに超えた」でも、去年まで基準内だった人が今年初めて超えたのか、5年前からじわじわ上がり続けてとうとう超えたのかで、意味がまったく違います。逆にずっと同じ値でわずかに外れているだけなら、その人にとってはそれが平常運転ということもあります。

去年・一昨年の結果は捨てないでください。 医師にとって過去の結果は今年の1枚と同じくらい情報量があります。

健診で出てくる主な検査値 ── ざっくりガイド

ここからは、健診の結果に載っている検査値を「何を見ている検査なのか」という視点でざっくり説明していきます。細かい数値を覚える必要はありません。「ああ、これはあの臓器のことね」とわかるだけで十分です。

血圧(収縮期/拡張期)

何を見ているか: 血管にかかる圧力

健診の場では上の血圧(収縮期)が140以上、または下の血圧(拡張期)が90以上だと高血圧と判定されます。

ただし、健診のときは緊張して普段より高く出ることがあります(「白衣高血圧」といいます)。ご家庭で測る場合の目安は少し低く、135/85以上が続くかどうかが目安になります。1回の測定で慌てず、ご家庭でも測ってみて高い日が続くようなら一度ご相談ください。

血圧についてもっと詳しく → 「血圧高め」と言われたら?まず押さえておきたい血圧の基本のキ

血糖値・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

何を見ているか: 血液中の糖分の量

  • 空腹時血糖:検査当日の朝の血糖値。126以上で糖尿病が疑われます
  • HbA1c:過去1〜2か月の血糖値の平均を反映する指標。6.5%以上で糖尿病が疑われます

空腹時血糖が100〜125、HbA1cが5.6〜6.4のあたりは、糖尿病とは言えないけれど正常とも言いきれない範囲です。ここで気づけるかどうかが、あとあと効いてきます。

空腹時血糖は前日の食事やストレスでも動きますが、HbA1cは長い期間の平均なのでごまかしが効きません。通知表のようなものだと思ってください。

血糖値やHbA1cについて詳しくは → 「血糖値が高い」と言われたら?

脂質(LDL・HDL・中性脂肪)

何を見ているか: 血液中のコレステロールや脂肪の量

  • LDLコレステロール(悪玉):高すぎると血管の壁に溜まる。140以上で要注意
  • HDLコレステロール(善玉):血管を掃除してくれる役割。40未満だと少なすぎ
  • 中性脂肪(TG):エネルギーの貯蔵庫。空腹時に150以上で高め

中性脂肪は食事の影響を強く受けるので、採血の前に何か食べていないかで数値がかなり変わります。健診前の飲食について案内があったはずなので思い当たる方は次回に持ち越して構いません。

LDLが高い=すぐに脳梗塞・心筋梗塞、ではありませんが、高い状態が何年も続くと動脈硬化が進みます。 「今すぐ困らないから」と放置しがちな項目です。

コレステロールについて詳しくは → 「コレステロールが高い」と言われたら?

腎臓(クレアチニン・eGFR)

何を見ているか: 腎臓がどれだけ元気に働いているか

  • クレアチニン(Cr):腎臓で濾過される老廃物。腎臓の働きが落ちると血液中に溜まって数値が上がる
  • eGFR:クレアチニンの値から計算した、腎臓の働きを表すスコア。100点満点の「腎臓の元気度」のようなもの

eGFRが60未満の状態が3か月以上続くといったことがあると、慢性腎臓病(CKD)と判断されます。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり悪くなるまで自覚症状が出ません。だからこそ、健診で数値を確認しておくことに意味があります。

腎臓について詳しくは → 5人に1人の隠れ腎臓病 ― あなたの健診結果は大丈夫?

肝臓(AST・ALT・γ-GTP)

何を見ているか: 肝臓がダメージを受けていないか

  • AST(GOT)・ALT(GPT):肝臓の細胞が壊れると血液中に漏れ出す酵素。どちらも30以下がおおむね正常とされています
  • γ-GTP:お酒の飲みすぎや脂肪肝で上がりやすい指標

ここは近年いちばん考え方が変わった項目なので、少し詳しくお話しします。

「γ-GTPが高い=お酒の飲みすぎ」と思われがちですが、お酒を飲まなくても上がることがあります。 そしてALTがASTより高いときは脂肪肝の可能性があります。

かつて脂肪肝は「お酒を飲む人の病気」というイメージでした。いまは違って、肥満や糖尿病、血圧や脂質の異常に伴う脂肪肝が増えていて、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という新しい呼び名が使われるようになりました。「非アルコール性」という否定形の名前をやめて「代謝の問題と関連している」と言い直したものです。

日本肝臓学会は2023年に、「ALTが30を超えていたら、一度かかりつけ医に相談を」という目安を出しています。健康な成人の15%ほどが当てはまる水準ですが、病気だと決めつけるための線ではなく話をはじめるための入口として設けられたものです。

肝臓について詳しくは → 脂肪肝とMASLD「お酒は飲まないのに」

尿酸(UA)

何を見ているか: 痛風や尿路結石のリスク

尿酸値が7.0を超えると「高尿酸血症」です。尿酸が高い状態が続くと、関節に結晶が溜まって痛風の発作を起こすことがあります。足の親指の付け根が突然腫れて激痛が走る、あの症状です。

尿酸はビールやレバーなどプリン体の多い食品で上がりやすいですが、体質(体内での作りすぎや、排泄の低下)の影響が大きい項目です。食事だけでは下がりにくいこともあります。

尿酸について詳しくは → 「尿酸値が高い」と言われたら|痛風・高尿酸血症の話

貧血(Hb:ヘモグロビン)

何を見ているか: 血液が酸素を運ぶ力が十分かどうか

ヘモグロビン(Hb)は赤血球の中にある酸素を運ぶタンパク質です。男性で13未満、女性で12未満だと貧血が疑われます。

貧血は「ちょっとフラフラする程度でしょう」と軽く見られがちですが、疲れやすさ、動悸、息切れの原因になります。女性は月経による鉄不足で貧血になりやすい一方、貧血そのものが結果であってその原因が別にあることもあります。 とくに、これまで指摘されたことがなかった方が新しく貧血を指摘された場合は一度かかりつけ医にご相談ください。

なお、消化管からのごく少量の出血は便潜血検査で拾い上げる仕組みになっています。貧血と便潜血の両方に印がついていた方は、その紙を持って受診してください。

尿検査(尿蛋白・尿糖・尿潜血)

何を見ているか: 腎臓や膀胱のトラブルのサイン

  • 尿蛋白:腎臓のフィルター機能が弱ると、本来漏れないはずのタンパク質が尿に出てくる
  • 尿糖:血糖値がかなり高い場合に、糖が尿に溢れ出す
  • 尿潜血:尿に血液が混じっている(目に見えないレベルでも検出される)

どれも「+」が出たら一度確認しておきたい項目です。ただし、激しい運動の後や生理中など一時的に陽性になることもあります。再検査で陰性なら心配ないことが多いです。

「要再検査」と「要精密検査」は、どう違う?

健診の判定欄に「要再検査」「要精密検査」と書かれていると不安になりますよね。この2つ、実は意味が少し違います。

要再検査は、「今回は基準値を外れていたけれど、一時的なものかもしれないからもう一度測りましょう」という意味です。再検査で正常に戻ることも少なくありません。

要精密検査は、「何か隠れている可能性があるので、詳しく調べましょう」という意味です。こちらはより積極的に受診していただきたいサインです。

どちらにしても、放置がいちばんよくありません。 「異常なし」以外の判定が出たらまずは結果用紙を持ってかかりつけ医にご相談ください。

結果用紙を持って受診するときのコツ

健診の結果を持って病院に行くとき、ちょっとした準備でやり取りがスムーズになります。

過去の結果も一緒に持っていく。 去年・一昨年の結果があれば、医師は変化の流れを見ることができます。「今年だけ高い」のか「毎年少しずつ上がっている」のかで対応が変わることがあります。

気になる項目に丸をつけておく。 全部聞こうとすると時間が足りなくなります。特に気になる項目に丸をつけて「ここを聞きたい」と伝えると、限られた時間を有効に使えます。

お薬手帳も一緒に持っていく。 すでに薬を飲んでいる方は、お薬手帳があると医師が全体像を把握しやすくなります。

明日からできること

いきなり全部は変えなくて大丈夫です。まずは3つだけ。

1つ目は、今年の結果用紙を引き出しから出してくること。 読まなくて構いません。まず机の上に出すところからです。

2つ目は、去年の結果を探して並べてみること。 HやLがついた項目が去年はどうだったか。上がっているのか、横ばいなのか。 それだけで次に何をすべきかがかなり見えてきます。

3つ目は、「異常なし」以外の判定がついた項目に丸をつけること。 そこまでできたらあとはその紙を持って受診するだけです。

そして、健診とは別に年齢によって受けておいたほうがよい検査やワクチンがあります。こちらは検査とワクチンの年齢別カレンダーにまとめました。

参考文献・引用元

本記事は以下の資料を参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【参考資料】

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

健診の結果用紙って、届いたときは「ちゃんと見なきゃ」と思うのに開いた瞬間アルファベットの洪水で心が折れる。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

実は医師の側からすると「健診で引っかかったので来ました」と結果用紙を持って来てくださる患者さんは、とてもありがたい存在です。早い段階で見つけて対応できる、まさに理想的な受診のきっかけだからです。逆に「3年前の健診で引っかかったけど放置してました」と言われると、内心ヒヤッとすることもあります。

結果用紙は引き出しにしまわず、ぜひ一度この記事と見比べてみてください。「ああ、これは肝臓のことか」とわかるだけで、あの暗号みたいな紙がちょっとだけ身近になるはずです。

次回はその肝臓の話です。「お酒は飲まないんですけどね」と言われることがいちばん多い、脂肪肝のお話をします。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

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