「先生、健診で尿酸値が7.5って言われたんですけど。痛くもなんともないし、ビール好きなんで仕方ないかなと思ってます。薬飲んだほうがいいの?」
外来で本当によく聞くセリフです。
たしかに尿酸値はビール好きの代名詞のように扱われがちで、「ちょっと高い」程度なら放っておく方がとても多いです。でも実は、痛風発作の痛みは「人生最大の痛み」と言われるレベルで一度経験すると「もっと早く対策しておけば」と口を揃えておっしゃる病気です。
そして以前お話しした尿管結石の記事とも、実は深いつながりがあります。
今回は高尿酸血症と痛風について、原因・食事・薬・尿管結石との関係まで、丁寧に整理していきます。
尿酸って、そもそも何?
尿酸(にょうさん)は体の中で「プリン体」が分解されてできる老廃物です。
「プリン体」と聞くとビールを思い浮かべる方が多いと思いますが、実はプリン体は体のあらゆる細胞の中にあります。
- 食べ物から取り込まれるプリン体:全体の 2〜3割
- 体の中で作られるプリン体:全体の 7〜8割
——という割合で、実は食べ物よりも体内で作られる方がずっと多いのです。
「お酒さえやめれば尿酸下がる」と思っている方には少し残念な真実ですが、それでも食事と生活で 0.5〜1mg/dLくらいは動かせます。後ほど詳しくお話しします。
「高尿酸血症」とは
日本のガイドラインでは、
- 男女問わず、血清尿酸値 7.0 mg/dL を超えると「高尿酸血症」
と定義されています。性別での差はありません。
ただし、「7.0を超えたらすぐ薬」というわけではなく、症状の有無・他のリスク・尿酸値の高さを組み合わせて、薬を始めるかどうかを判断します。
なぜ痛風発作が起きるのか
血液中の尿酸が増えすぎると、関節の中に 針のような結晶ができてしまいます。この結晶を体が「異物」と認識し、激しい炎症を起こします。これが痛風発作の正体で、足の親指の付け根に起きることが多いです。
発作の特徴
- 足の親指の付け根から始まることが最多(70%以上)
- 夜中〜明け方に突然起きる
- 赤く腫れて熱を持つ
- 24時間以内に痛みのピーク
- 歩けないほどの痛み、寝具の重みでも激痛
- 治療なしでも 1〜2週間で自然に治る
「自然に治るならいいじゃないか」と思うかもしれません。でも、痛みが消えた=治った、ではないのがミソです。痛みが引いても結晶は関節に残ったままで、放っておくと発作を繰り返し関節を徐々に破壊していきます。
こんな時に発作は起きやすい
- 大量の飲酒の翌日(特にビール・日本酒)
- 激しい運動・脱水の後
- 暴飲暴食・ストレスの翌日
- 手術・大きなケガの後
「歓送迎会の翌朝」「マラソン大会の翌日」「夏の脱水気味の日の朝」——きっかけがあることが多いです。
食事——「ビールだけが悪者」ではない
食事で変えられる尿酸値はせいぜい 0.5〜1mg/dL ですが、薬と組み合わせると効果が引き立ちます。
プリン体が特に多い食べ物(控えめにしたい)
| 食品 | プリン体量(100gあたり) |
|---|---|
| 鶏レバー | 約 312mg |
| 豚レバー | 約 285mg |
| 牛レバー | 約 220mg |
| カツオ | 約 211mg |
| イワシ | 約 210mg |
| 干物(マイワシ) | 約 305mg |
| 白子(タラ) | 約 560mg |
| あん肝(生) | 約 104mg |
| ビール | 約 4〜7mg(100mLあたり) |
ガイドラインでは1日のプリン体摂取を400mg以下にすることが推奨されています。レバー・白子・干物などを毎日食べる習慣がある方は要注意です。
お酒は「プリン体」より「アルコールそのもの」が問題
意外と知られていないのが、プリン体ゼロのお酒(焼酎・ウイスキー)も尿酸値を上げるということです。
- アルコールが分解されるときに 尿酸の産生が増える
- アルコールが尿酸の排泄を邪魔する
- お酒のつまみがプリン体豊富
つまり「プリン体ゼロのビール」「焼酎なら大丈夫」も、安心しすぎないでください。
🍺 量の目安
- ビールなら 1日 350〜500mL程度まで
- 日本酒なら 1合まで
- 焼酎なら 0.5合まで
- 週に 2日は休肝日
「果糖」も尿酸を上げる
近年、注目されているのが果糖(フルクトース)です。ジュース・清涼飲料・甘いお菓子に含まれる果糖は肝臓で代謝されるときに尿酸を増やします。
「お酒は飲まないのに尿酸が高い」という方はジュースや甘い飲み物が黒幕のこともあります。コーラやスポーツ飲料を毎日のように飲んでいたら、まず水・お茶に切り替えてみてください。
積極的に摂りたいもの
- 水・お茶:1日 1.5〜2L を目標に。尿量が増えれば尿酸が排泄されやすい
- 低脂肪の乳製品:尿酸値を下げる方向に働く
- 野菜・果物(適量):尿をアルカリ性に近づけ尿酸が溶けやすくなる
- コーヒー:尿酸を下げる方向に働くという報告あり
痛風発作の対処
発作が起きたら、まずは痛みを止めることが最優先です。
急性発作のとき
- 患部を高くして冷やす
- NSAIDs(ロキソプロフェン等)を主治医の指示で使う
- コルヒチン(古くから使われる発作専用の薬)
- ステロイド(NSAIDsが使いにくい場合)
発作中に自分の判断でやってはいけないこと
- 自己判断で尿酸値を下げる薬を飲み始める・量を増やす
- すでに飲んでいる薬を自己判断でやめる
尿酸値が急に動くとかえって発作が悪化することがあります。だから発作中は「今の状態を保つ」のが基本です。すでに飲んでいる方は自己判断で中止せず継続、新しく始めるタイミングは主治医が判断します。
薬で尿酸値を下げる——「いつから始めるか」
- 痛風発作を起こしたことがある:基本的に薬の対象
- 尿酸値 8.0以上+合併症(高血圧・糖尿病・脂質異常・腎臓病など)あり:薬を検討
- 尿酸値 9.0以上:合併症なしでも薬を検討
- 無症状で 7.1〜7.9:原則生活指導、必要に応じ薬
目標値は 6.0 mg/dL以下(痛風結節がある人は5.0以下)。「6を切る」を目指す、と覚えてください。
主な尿酸を下げる薬
① 尿酸の「作りすぎ」を抑える薬(尿酸生成抑制薬)
- アロプリノール(ザイロリック®)
- フェブキソスタット(フェブリク®)
- トピロキソスタット(トピロリック®)
体内で尿酸を作る酵素(キサンチンオキシダーゼ)を抑える薬です。腎機能が低下している方でも比較的使いやすいのが特徴です。
② 尿酸の「排泄」を増やす薬(尿酸排泄促進薬)
- ベンズブロマロン(ユリノーム®)
- ドチヌラド(ユリス®)
腎臓からの尿酸排泄を増やす薬です。結石ができやすい方には注意が必要で、水分摂取と尿のアルカリ化(後述)を並行します。
内服を始めるときの注意
- 開始のタイミングは主治医が判断する(自己判断で始めない)
- 始めて数か月は発作が起きやすいことがある(少量から始める)
- 自己中断しない(やめると尿酸がリバウンドして発作)
「飲み始めてから発作が増えた」と感じる方は珍しくありませんが、これは結晶が溶け出していく過程で一時的に起きるものです。乗り越えた先で発作はぐっと減っていきます。
尿管結石と尿酸——意外なつながり
実は尿管結石の原因の一部は 尿酸結石です。
- カルシウム結石が圧倒的に多いものの、尿酸結石は全体の 5〜10% を占める
- 尿が酸性になりすぎることが大きな原因
- 高尿酸血症の方は、結石もできやすい
対策は水をしっかり飲む こと、そして尿をアルカリ性に近づけることです。野菜・果物・海藻を多めにとり、必要に応じて 内服薬を併用します。
まとめ
- 尿酸値 7.0超 で高尿酸血症、8.0超 から痛風リスクが上がる
- 痛風発作は足の親指の付け根に多く、24時間でピークの激痛
- 食事だけでなく アルコール・果糖(ジュース) も尿酸を上げる
- 水分は 1.5〜2L/日、コーヒー・低脂肪乳製品は尿酸を下げる方向
- 薬の目標値は 6.0 mg/dL以下。自己中断は禁物
- 尿管結石とも関連——尿をアルカリ性に近づけることも大事
「いつかは対処しなきゃ」と思いつつ、何年も尿酸値が高めのまま放置している方は多いです。痛風発作が来てからではなく、来る前に動いておきたい——そんな病気だと覚えておいてください。
参考文献・引用元
本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
【参考ガイドライン】
- 日本痛風・尿酸核酸学会『2018年 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』
- 米国リウマチ学会(ACR)『2020 Guideline for the Management of Gout』
- 欧州リウマチ学会(EULAR)『2016 Updated Recommendations for the Management of Gout』
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございます。
痛風は発作を起こしたことがあるかどうかで患者さんの認識が大きく変わる疾患と思っています。高血圧などの生活習慣病と同じで普段は痛くもかゆくもないという特徴を持っていますが、発作を起こしたことがある人はみな口をそろえて「尿酸はしっかり下げとかないと」と言います。
あと個人的な意見ですが、痛風発作はかなり痛そうなので気を付けておくのに越したことはないかと思います。
これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

