【医師が解説】体重が増えた=不健康?|「数字」より「毎日の習慣」を見てほしい理由

記事タイトル画像「数字より、毎日の習慣 体重が増えた=不健康?」。数字が書かれた木の積み木の写真に、タイトルの帯を重ねている。 つぶやき
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この記事は体重などの数字と健康との付き合い方についての理解を深めていただくことを目的としています。体重の増減や検査の数値について、ご自身だけで良し悪しを判断することは避けてください。

最終的な治療方針は、必ず主治医とよく相談の上で決めてください。この記事が主治医との会話をより実りあるものにするきっかけになれば嬉しいです。

「タバコをやめてから、体重が増えてしまって……」

診察の最後にこんな相談を受けました。禁煙して1年ほどの方です。

体重は増えたといっても標準の範囲です。お話を聞くと、お酒も減らして、毎週のように体を動かしている。正直、こちらから直してほしいところは見当たりませんでした。

それでも本人は、体重計の数字が増えたことで「健康じゃなくなってしまった」と感じていました。

気持ちはよくわかります。体重は毎日はかれて、はっきり数字で見えるものです。増えれば「失敗した」と感じてしまうのはとても自然なことです。

実はちょうど同じ頃、「体重が減らない」「血圧が下がらない」という相談が続きました。どの方も、やるべきことはおおむねできている。それなのに数字だけを見て落ち込んでいる。

今回はこの時期に続いた相談をもとに、体重や血圧といった「数字」と健康との付き合い方について考えてみます。

健康は「体重」だけでは決まらない

まず整理しておきたいのは、体重は健康の「ものさしの一つ」であって健康そのものではないということです。

たとえるなら、学校のテストの点数と毎日の勉強の関係に似ています。

テストの点数は目に見えるので、つい気になります。でも、毎日コツコツ勉強を続けていれば、ある回のテストの点がたまたま下がっても、力そのものは落ちていませんよね。逆に、点数ばかり気にして勉強が嫌になってやめてしまったら、そちらのほうがずっと困ります。

体重もこれと同じです。

  • テストの点数にあたるのが、体重や血圧、血液検査の数値などの「結果」
  • 毎日の勉強にあたるのが、食事・運動・禁煙・お酒との付き合い方などの「習慣」

結果の数字は季節や体調、ちょっとした生活の変化で上下します。一方で、長い目で見て体を守ってくれるのは毎日の習慣のほうです。

人によって違う「健康の意味」

「健康」という言葉が何を指すかは、実は人によってかなり違います。

ある人にとっては「体重が増えないこと」、別の人にとっては「孫と一緒に遊べること」、また別の人にとっては「仕事を休まずに続けられること」かもしれません。

体重の数字だけが健康のものさしではありません。冒頭の方の相談も体重そのものより、本人にとっての「健康」が体重の数字と結びつきすぎていたことが、悩みの中心にありました。

「体重はコントロールできなくても、生活習慣がコントロールできていればいい」

ただひとつ心配だったのは、体重が気になるあまりまたタバコに手が伸びてしまうことです。禁煙して体重が増えてもタバコを吸い続けるよりずっといい、という研究もあります*1(禁煙と体重の関係は以前の記事「禁煙したら太った」の正体で詳しくまとめています)。

そこで伝えたのが、この言葉でした。

「体重はコントロールできなくても、生活習慣がコントロールできていればいい」

体重は頑張った分だけ必ず減るものではありません。季節やホルモン、体質の影響も受けます。でも、タバコを吸わない、お酒を控える、体を動かす、といった毎日の行動は自分で選ぶことができます。

見るべきものを「動かせない数字」から「自分で選べる行動」に移すことで、すでにできていることに自分で気づいてほしいと考えました。

その後も定期的な診察のたびにお話を続けました。少しずつ気持ちの折り合いがついていったようで、何度目かの診察ではこんな言葉をいただきました。

「先生の『体重はコントロールできなくても、生活習慣がコントロールできていればいい』という言葉で、自分の中でスッキリ腑に落ちて、ここまで続けてくることができました」

ちなみにその頃には、体重も禁煙前程度まで戻っていました。

「数字より、毎日の習慣」と題したイラスト。左は「揺れ動く数字」として、上下の矢印に囲まれた体重計と血圧計。右は「自分で選べる習慣」として、「体を動かす」「お酒を控える」「禁煙」と書かれた積み木が積み上がり、雪のアヒルが右側を指している。

数字が動かない時期にこそ、習慣を見てほしい

冒頭で触れた、同じ頃に相談を受けた方たちは比較的若い方ばかりでした。

お話を聞いてみると、どの方も食事や運動などのやるべきことは、おおむねできていました。直す必要があったのは生活習慣ではなく、「数字が下がらない=自分はできていない」という受け止め方のほうでした。

なかなか結果が出ない時期

そのうち2人の方は、その後も通院を続けてくださいました。

生活習慣を変えても、体重や血圧がすぐに下がるとは限りません。数字に表れるまでには時間がかかることもあります。2人ともなかなか結果が出ない時期がしばらく続きました。

そのたびに私は、同じことを繰り返しお伝えしました。

「体重や血圧が下がるという結果ももちろん大事です。ただいちばん大事なのは、生活習慣を変えられていることです」

数字が動かない時期は本人がいちばんつらい時期でもあります。だからこそ、できている習慣のほうに目を向けてもらえるよう、意識しています。

1回きりの診察のあとで

もう1人の方とは健康診断で1回お会いしただけでした。その後どうされているのか、私にはわからないままでした。

ところが1年ほどたって、その方から報告をいただきました。あのときの言葉を意識して、生活習慣の改善を続けてきたこと。そして、結果も出たということでした。

ただ、ここで紹介したのは、あくまで私が経験した数人の方の経過です。「気にしなければ数字が良くなる」という話ではありません。大事なのは数字が良くなったことよりも、生活習慣が続いたことのほうだと思っています。

「体重を気にしなくていい」という意味ではありません

誤解のないようにお伝えしておくと、体重がどうでもいいという話ではありません。

体重は体の変化に気づくための大事な手がかりです。もともと体重が多めの方や、血糖値・血圧などが気になる方にとっては、体重の管理が治療の一部になることもあります。また、思い当たる理由がないのに体重が大きく変わるときは、体の中で何かが起きているサインのこともあります。

どこまで体重を気にしたほうがいいかは年齢や持病、体の状態によって一人ひとり違います。心配なときは、ご自身だけで判断せず、主治医に相談してみてください。

この記事でお伝えしたいのは、数字だけを見てできている習慣まで否定しなくていい、ということです。

まとめ:まずは「できていること」を数えてみる

体重計の数字が気になったときは、いったん数字から目を離して、自分が毎日やれていることを数えてみてください。

  • タバコを吸わずに過ごせている
  • お酒の量を意識できている
  • 週に1回でも体を動かしている
  • 健康診断を受けている
  • よく眠れている、話せる友人がいる

いきなり全部できていなくても大丈夫です。1つでも当てはまれば、それは立派な「健康のための行動」です。

そして、その一覧を次の診察に持っていって主治医と一緒に眺めてみてください。「数字はこうだけど、こんなことは続けられています」と伝えられれば、診察での会話もきっと実りあるものになるはずです。

参考文献・引用元

本記事は以下の資料を参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【引用文献】

*1 禁煙後の体重変化と2型糖尿病・死亡率に関する研究:Hu Y, et al. (2018) N Engl J Med. [PubMed]

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

血液検査の結果や体重、血圧といった目に見える数字はもちろん大事です。私たち医師も毎回よく見ています。でも、その数字の向こうにある「毎日の暮らし」に目を向けることも、同じくらい大切なのだと、この方たちから教えてもらった気がしています。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

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