健康診断で「血圧高め」と言われて、不安になっていませんか。「高め」だからまだ大丈夫だろうと考えていませんか。
高血圧は基本的に自覚症状がないまま進行し、脳や心臓に致命的なダメージを与える最大のリスク要因です。治療の主役は医師ではなく患者自身であり、正しい診断基準を知り生活習慣の改善と必要に応じた薬物治療を組み合わせることが不可欠です。本記事では高血圧治療の全体像を分かりやすく解説します。
自分の言葉で説明できるようになろう。高血圧とは。
そもそも血圧とは?
血圧とは一言で言うと、「心臓が収縮・拡張した時の血管の圧力」のことです。
血圧は2つの測定値によって規定されます。
- 上の血圧(収縮期血圧):心臓がギュッと収縮した時の血管の圧力
- 下の血圧(拡張期血圧):心臓が拡張した時の血管の圧力
一般的に血圧といえばこの2つの値のことを言います(例:120/70)。血圧があるから全身に血液を行き渡らせることができます。
高血圧は「水道管のホース」をイメージするとわかりやすいです。
ホース = 血管、水 = 血液にあたります。

長年使ったホースが劣化して固くなると、強い圧力をかけないと水が出なくなりますよね。そのまま無理に使い続けると、いつかパンッと破裂してしまいます。また流れるのがサラサラの水ではなくドロドロの液体であれば、いつか途中で詰まってしまうかもしれません。
実際の人体はここまでシンプルではありませんが、これが脳の血管で起きると破裂すれば「脳出血」、詰まれば「脳梗塞」を引き起こすことになります。
高血圧の患者はどれくらいいるの?
日本では約4300万人と言われていますが、そのうちの3分の1は血圧が高いとも自覚していません。
世界的には成人の約30%が罹患していると言われています。2017年に米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)が高血圧症の基準を引き下げており(140/90→130/80)、アメリカではこの新基準に当てはめると成人の約45%が高血圧に該当するとも言われています。
ちなみに基準が厳しくなったのは、それだけ早期からの対策が心臓病や脳卒中の予防に重要だということが判明したからです。
なぜ高血圧は「サイレントキラー」なのか?
自覚症状がほとんどないのに、脳出血や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こすからです。
これは高血圧に限らず他の生活習慣病(糖尿病、脂質異常症)にも言えることです。ただ脳の血管の病気においては約40%は高血圧が原因です。高血圧は喫煙やコレステロール、糖尿病よりも、脳卒中や心臓病を引き起こす最大のリスク要因なのです。
なんで血圧が上がるの?
血圧が上がる原因は一つではありません。加齢や遺伝(家族に高血圧がいる)などの避けられない要因もありますが、多くは「生活習慣」に関係しています。
- 塩分の摂りすぎ: 特に日本食(塩、みそ、醤油)は塩分が多くなりがちです 。
- 肥満: 食の欧米化により、日本でも肥満傾向の人が増えています 。
- その他: 過度な飲酒、運動不足、睡眠不足、ストレスなど 。
つまり、毎日の生活習慣を少し見直すだけで、血圧を下げるチャンスは十分にあるということです。
病院の血圧だけで安心しないで。「家庭血圧」こそが治療の主役
家で血圧を測ってください。血圧の測定方法とは?
どのガイドラインにも「高血圧の診断、管理に関して家庭血圧を推奨する。」と書かれています。
血圧の測定方法に関して
- 診察室血圧
- 診察室外血圧:家庭血圧と24時間自由行動下血圧がある。
※このとき、血圧計は二の腕に巻くタイプを推奨する。
※24時間自由行動下血圧は名前の通り血圧計を付けたままにして1日を通して計測する方法であるが、実際に行うことは多くないので今回は割愛します。
めんどくさいよ。なんで家の血圧が大事なの?
気持ちはわかります。でも、病院の血圧はあくまで「その瞬間のスナップ写真」に過ぎないということです。
病院の血圧だけだと「不要な人に血圧の薬を出してしまう」「本来治療が必要な人を見逃してしまう」といったすれ違いが発生してしまいます。具体的には以下のようなパターンの高血圧があります。
白衣高血圧: 病院だと緊張して高くなる人。この数値だけで薬を出されると「効きすぎてふらつく(低血圧)」のリスクがあります。
仮面高血圧: 病院では正常なのに、家や職場で高い人。病院では仮面をかぶったように正常だが、家では高い。これが一番見逃されやすく危険です。

だからこそリラックスした状態で毎日測る「家庭血圧」が大切です。それを血圧手帳に記載して見せてください。血圧手帳は多くは病院や自治体で配布していることが多いです。ぜひ聞いてみてください。
ネット上にも自身で印刷して使用できるサイトがいくつか公開されていますので参考にしてください。
家庭血圧は「135/85mmHg」が高血圧です
家ではリラックスしている分、病院よりも血圧の基準が「5」厳しくなります。
高血圧の診断は正直かなり細かいので簡単にまとめてみました。
| 分類 | 診察室血圧 (mmHg) | 家庭血圧 (mmHg) | 状態の目安 |
| 正常血圧 | 120未満 かつ 80未満 | 115未満 かつ 75未満 | 理想的な状態 |
| それ以外 | それ以外 | グレーゾーン | |
| 高血圧 | 140以上 または 90以上 | 135以上 または 85以上 | 高血圧 |
※グレーゾーンにいる人でも元々の病気や状況によっては薬を飲んだほうがいいケースがあるので、「グレーゾーン = 薬を飲まなくても大丈夫」というわけではありません。
| 分類 | 診察室血圧 (mmHg) | 家庭血圧 (mmHg) | 状態の目安 |
| 正常血圧 | < 120 かつ < 80 | < 115 かつ < 75 | 理想的な状態 |
| 正常高値血圧 | 120〜129 かつ < 80 | 115〜124 かつ < 75 | 正常だが少し高め |
| 高値血圧 | 130〜139 または 80〜89 | 125〜134 または 75〜84 | 「高血圧予備軍」 |
| Ⅰ度 高血圧 | 140〜159 または 90〜99 | 135〜144 または 85〜89 | ここからが「高血圧」 |
| Ⅱ度 高血圧 | 160〜179 または 100〜109 | 145〜159 または 90〜99 | 中等症の高血圧 |
| Ⅲ度 高血圧 | ≧ 180 または ≧ 110 | ≧ 160 または ≧ 100 | 重症の高血圧 |
血圧を下げるために必要なこと
何で下げないといけないの?
上の血圧を 「 5」下げるだけで 約10% の合併症(脳卒中や心筋梗塞など)リスクを減らせます*1
血圧が高い人はそうでない人と比べて「平均5年早く」心臓病を発症すると言われています*2。こう言われると下げるべき理由がよく分かると思います。
治療の2本柱
高血圧治療は、大きく分けて「生活習慣の改善」と「お薬による治療(薬物療法)」の2つです 。
しかし、現実には約半数の患者さんが血圧を目標値まで下げきれていません 。
「治療がうまくいかない背景には、薬を飲み忘れてしまうことや、目標血圧まで下がっていないのに治療が見直されないまま時間が経ってしまうことなどがあります。だからこそ、家庭血圧のデータを主治医と共有して『今の治療でちゃんと下がっていますか?』と確認することが大切です。」
具体的な生活習慣の改善方法やあなたに合ったお薬の選び方については、次回の記事で詳しく解説します。
参考文献・引用元
本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
【参考ガイドライン】
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
- 米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)ほか『2025年 成人の高血圧管理ガイドライン』
- 欧州心臓病学会(ESC)ほか『2024年 高血圧管理ガイドライン』
【引用文献】
*1 血圧降下治療による心血管疾患の予防効果に関する研究:Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration. (2021) Lancet. [Pubmed]
*2 血圧と心血管疾患リスクに関する研究:Rapsomaniki E, et al. (2014) Lancet. [Pubmed]
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブログを始めたばかりで手探りな部分も多いですが、読んでいただいた方に「自分の病気、飲んでいる薬を自分の言葉で説明できるようになる」ことを目標に、これからも発信を続けていきます。私自身もこうしてブログにまとめることで思考が整理され、とても勉強になっています。
次回の記事で一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。
