【医師が解説】帯状疱疹は「早く気づけるか」が勝負。ピリピリ・チクチクを見逃さないで

2枚の付箋があって、「帯状疱疹のサイン」のタイトルがある 皮膚科

この記事は帯状疱疹についての理解を深めていただくことを目的としています。ご自身の判断で薬の服用を中止したり、量を変更したりすることは絶対におやめください。

最終的な治療方針は、必ず主治医とよく相談の上で決めてください。この記事が主治医との会話をより実りあるものにするきっかけになれば嬉しいです。

「先生、3日前から右のお腹がピリピリ痛くて……。今朝見たら赤いブツブツが出てきました」

こういう経過で来院される方がいると、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)だな」とほぼ確信します。そして心の中で「今日来てくれてよかった」と思います。

帯状疱疹は「気づいてから治療を始めるまでの速さ」がその後の経過を大きく左右する病気です。今回は、帯状疱疹の正体から、「早く気づくためのヒント」、そして治療と予防についてお話しします。

帯状疱疹の正体——子どもの頃の水ぼうそう

帯状疱疹を引き起こすのは「水痘・帯状疱疹ウイルス」。実はこれ、子どもの頃にかかった水ぼうそう(水痘)と同じウイルスです。

水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体から完全にいなくなったわけではありません。神経の根元(神経節)に潜んで、ずっと眠っています。普段は免疫の力で押さえ込まれているので何も起きません。

ところが、加齢や疲労、ストレス、病気などで免疫力が下がると、眠っていたウイルスが目を覚まします。目を覚ましたウイルスは神経に沿って皮膚の表面まで出てきて、そこで炎症を起こします。これが帯状疱疹です。

日本人の成人の約90%以上がこのウイルスを体内に持っているとされ、帯状疱疹を発症する確率は80歳まで約3人に1人と言われています。

帯状疱疹の症状——「片側だけ」がキーワード

帯状疱疹の典型的な経過はこうです:

① まず痛み
皮膚に何も出ていないのに、体の一部がピリピリ・チクチク・ズキズキと痛む。「何だろう?」と思う段階。この時点ではまだ帯状疱疹と気づかないことが多い。

② 数日後に発疹が出現
痛みのあった場所に、赤い斑点→水ぶくれ(水疱)が帯状に出てくる。

③ 発疹は「体の片側だけ」に帯状に並ぶ
右半分だけ、左半分だけ、というように体の左右どちらか一方にしか出ないのが最大の特徴です。神経の走行に沿って出るため、帯のような分布になります。

よく出る場所

  • 胸〜背中(肋骨に沿って出ることが多い)
  • 顔面(額〜目のまわり)※目の合併症に注意
  • 腰〜お尻

顔面、特に額や目のまわりに発疹が出るタイプは目の中の炎症を起こすことがあります。視力に影響することもあるため、皮膚科に加えて眼科の受診も検討してください。鼻の先や鼻の横に発疹が出ているときは、目の中にも炎症が及びやすいとされています。

こんなときは帯状疱疹を疑って!

  • 体の片側だけがピリピリ・チクチク痛い
  • 痛い場所に赤いブツブツや水ぶくれが出てきた
  • 痛みが帯のように一列に並んでいる

特に50歳以上の方でこの症状が出たら、できるだけ早く受診してください。

なぜ「早く」が大事なの?

帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬を使います。ウイルスの増殖を抑えて、症状の悪化を防ぐ薬です。

この抗ウイルス薬は、発疹が出てから72時間(3日)以内に飲み始めるのが理想とされています。早く始めるほど、症状が軽く済み、後遺症(後で説明する帯状疱疹後神経痛)のリスクも下がります。

逆に言えば「そのうち治るだろう」と放置していると、ウイルスが神経をどんどん傷つけて、後遺症が残りやすくなるのです。

だからこそ、「ピリピリするな?」と思ったら早めに受診してほしいのです。

帯状疱疹後神経痛——一番怖い後遺症

帯状疱疹そのものは、通常3〜4週間で皮膚の症状は治ります。でも、一部の方に「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症が残ることがあります。

これはウイルスに傷つけられた神経が修復されず、皮膚の症状が治った後もズキズキ・ジンジンとした痛みが何か月〜何年も続く状態です。

神経痛のリスクが高いのは:

  • 高齢者(50歳以上で急増)
  • 発疹が重症だった
  • 治療開始が遅れた
  • 痛みが最初から強かった

帯状疱疹後神経痛になると日常生活に大きな支障が出ます。服が擦れるだけで痛い、夜眠れない——こうした痛みが長期間続くのは本当につらいことです。だからこそ早期治療と予防(ワクチン)が重要なのです。

帯状疱疹の予防——ワクチンという選択肢

帯状疱疹はワクチンで発症率を減らすことができます。詳しくは帯状疱疹ワクチンの記事で解説していますが、ここでも概要をお伝えします。

現在使えるワクチンはシングリックス(不活化ワクチン)が主流で、予防効果は50歳以上で約97%、70歳以上でも約90%と非常に高い効果が報告されています。

2025年4月からは65歳の方などを対象とした定期接種も始まっています。

「もう水ぼうそうにかかったから」「一度帯状疱疹になったから」という方でも、再発することがあるため、ワクチンの検討をおすすめします。

まとめ

  • 帯状疱疹は子どもの頃の水ぼうそうウイルスが再活性化して起きる病気。約3人に1人が生涯で経験
  • 体の片側だけのピリピリ+赤い発疹が出たら帯状疱疹を疑う
  • 治療は抗ウイルス薬発疹から72時間以内の開始が理想
  • 最も怖い後遺症は帯状疱疹後神経痛。早期治療でリスク軽減
  • ワクチン(シングリックス)で予防可能。50歳以上は検討を

参考文献・引用元

本記事は以下の資料を参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【参考ガイドライン・サイト】


あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

つい先日も帯状疱疹の方を診察しました。特徴的な痛みはピリピリ・チクチクと言いますが、その方はお腹が痛いといって病院を受診されました。また発疹もない状態で診断にとても悩みました。ワクチンの回でも書きましたが、一般的な経過、症状でない症例は本当にわかりづらいです。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

タイトルとURLをコピーしました