「早朝6時、今まで感じたことのない腰痛を発症し救急要請」
救急外来で、顔面蒼白になりながら脂汗をかいている患者さん。体を丸めて、どんな姿勢をとっても楽にならない。お腹を触っても特に硬くない——。
こういうときに真っ先に疑う病気の一つが尿管結石です。
尿管結石は経験した人が口を揃えて「人生で一番痛かった」と言う病気です。そして厄介なことに、一度できた人は再発します。今回はこの尿管結石について、「なぜ痛いのか」「どんな治療をするのか」、そして何より「二度と繰り返さないためにどうすればいいか」をお話しします。
尿管結石ってなに?
腎臓は血液をろ過して尿を作る臓器です。尿は腎臓→尿管→膀胱→尿道という「尿路」を通って体の外に出ます。
尿管結石とは、尿の中のミネラル成分(カルシウムや尿酸など)が結晶化して石になったものです*1。石自体は腎臓の中で作られますが、その時は痛くありません。痛みが出るのは石が尿管に落ちてきて詰まったときです。
なぜあんなに痛いの?
尿管は直径わずか3〜4mmの細い管で、そこに石が詰まると尿の流れがせき止められます。すると腎臓に尿がたまって膨らみ、腎臓の内圧が急上昇します。
この圧力上昇と尿管が石を押し出そうとしてぎゅっと縮まるような動きをすることが合わさって、激痛が生じるのです。
痛みの場所は石がある位置によって変わります。背中~腰(脇腹)が多いですが、下腹部や陰部に痛みが走ることもあります。

尿管結石の治療
小さい石(5mm以下)→ 自然に出るのを待つ
5mm以下の石は医師の方針のもとで水分摂取と痛み止めを使いながら自然に排出されるのを待つのが基本です。
多くの場合、数日〜数週間で尿と一緒に出てきます。「あの激痛はなんだったんだ」というくらい、出てしまえばケロッとします。
大きい石・出てこない石 → 手術的治療
石が大きい(10mm以上)場合や、自然に出てこない場合は、以下のような治療を行います:
- ESWL(体外衝撃波結石破砕術):体の外から衝撃波を当てて石を砕く。
- TUL(経尿道的尿管結石砕石術):尿道から細いカメラを入れて、レーザーで石を砕いて取り出す。
どちらの治療も技術が進歩しており、以前に比べて体への負担はかなり小さくなっています。
こんなときは急いで受診を
- 高熱を伴う場合(結石+感染=緊急事態です)
尿管結石がある状態の発熱は要注意です。尿の流れがよどんだところに起きるばい菌感染(尿路感染症)は命に関わる感染症に進展する可能性があります。「風邪かな?」と思わず、熱があれば必ず受診してください。
再発予防——ここが一番大事
尿管結石の再発率は5年で約50%と報告されています。つまり、一度できた方の半数は5年以内にまた経験するということです。あの痛みをもう一度味わいたくないなら、予防が本当に大切です。
予防の基本は「水を飲む」こと
再発予防で最もエビデンスがあるのは実にシンプルで、水分をたくさん摂ることです。
目標は1日2リットル以上の尿量。そのためには、2.5リットル程度の水分摂取が必要です。「そんなに飲めない」と思うかもしれませんが、ペットボトル1本分(500mL)を今より多く飲むだけでも違います(心臓・腎臓の持病がある方は主治医と相談してください)。
大切なのは水やお茶で摂ること。ジュースや甘い飲み物は逆効果になることがあります。
食事で気をつけること
- カルシウムは適度に摂る:「石=カルシウム」のイメージがあり、それは正しいです。ただ制限すると逆にリスクが高まるので、むしろ適度にカルシウムを摂ったほうが結石予防になります
- シュウ酸を摂りすぎない:こちらも結石の成分の一つです。ほうれん草、たけのこ、チョコレート、紅茶などに多く含まれます。ただし「絶対食べてはいけない」のではなく、カルシウムと一緒に摂るとシュウ酸の吸収が減ります
- 塩分を控える:塩分を摂りすぎると尿中のカルシウムが増えます
- 動物性タンパク質を摂りすぎない:肉の食べすぎは尿酸を増やし、尿を酸性にします
尿酸結石の場合
尿酸値が高い方は、尿酸による結石のリスクがあります。この場合は尿酸を下げる治療を検討します。
コラム:「夏は結石の季節」
救急をやっていると実感しますが、尿管結石は夏に増えます。理由は単純で汗をかいて体内の水分が減り、尿が濃縮されるからです。
夏場に「水を飲む」ことの重要性は、熱中症予防だけでなく結石予防にもつながります。特に一度結石を経験した方は、夏場は意識して水分を多めに摂ってください。
まとめ
- 尿管結石は尿の成分が結晶化して石になる病気。尿管に詰まると激痛が起きる
- 小さい石は水分摂取+痛み止めで自然排出を待つ。大きい石は泌尿器科で砕く
- 発熱を伴う結石は緊急事態。「風邪かな?」と思わず、熱があればすぐ受診
- 再発率は5年で約50%。予防が最も重要
- 予防の基本は水を1日2リットル以上飲むこと。夏場は特に意識する
- カルシウムを避ける必要はない。むしろ適度に摂ることが予防になる
参考文献・引用元
本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
【参考ガイドライン】
- 日本泌尿器科学会ほか『尿管結石症診療ガイドライン第3版2023年版』
- 欧州泌尿器科学会『尿管結石ガイドライン』
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございます。
尿管結石は本当に患者がつらい病気です。我々は診断がついてしまえば「さっきの患者さんは尿管結石だったよ」と安心できますが、患者はそれどころではないです。過去に尿管結石をやったことがある医師の友人に聞いたことがありますが、「地獄だった、尿管結石の人にはどこまでも優しくなれる」と言っていたくらいです。
あと個人的に尿管結石は診断さえついてしまえば安心ですが、昔怖い思いをしたことがあります。尿管結石の症状は背中に突然発症する激痛です。もちろん稀ですが一部に大動脈解離といった怖い病気が隠れていることがあって、そういうケースを経験したことがあり、いつもドキドキしながら診療しています。
これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

