【医師が解説】知っておきたい帯状疱疹ワクチン ── 2025年からの定期接種化と最新情報

ワクチンを打っているところ ワクチン

帯状疱疹は子どもの頃にかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが体内に潜伏し、加齢や免疫力の低下をきっかけに再び活性化して発症する病気です。50歳以上で急増し、日本人の約3人に1人が生涯で経験するとされています。

強い痛みを伴う皮疹が特徴で、治癒後も「帯状疱疹後神経痛」として数か月〜数年にわたり激しい痛みが残ることがあります。高齢者ほど帯状疱疹後神経痛に移行しやすく、日常生活の質を大きく損なう原因になります。

こうした背景から、帯状疱疹の「予防」としてのワクチン接種が近年注目されています。本記事では、2025年4月からスタートした定期接種化の情報を含め、お話ししていこうと思います。

帯状疱疹とは ── なぜワクチンが必要なのか

帯状疱疹の原因は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)です。子どもの頃に水ぼうそうにかかると、治った後もウイルスは神経に潜伏し続けます。通常は免疫によって抑えられていますが、加齢やストレス、疲労、免疫力の低下などがきっかけで再活性化し、帯状疱疹を発症します。

発症すると、体の左右どちらかに沿って帯状の水ぶくれと痛みが現れます。顔面に出た場合は、めまい、難聴、顔面神経麻痺(顔の半分が動かなくなること)を起こすこともあります。

特に注意が必要なのが50歳以上の方です。発症率は50歳を境に急激に上昇し、80歳までに約3人に1人が発症するとされています。高齢になるほど重症化しやすく、帯状疱疹後神経痛のリスクも高まります。

抗ウイルス薬による治療は可能ですが、発症後72時間以内に開始する必要があり、薬で治療したとしても確実に帯状疱疹後神経痛を防ぐことは困難です。そのため「発症そのものを防ぐ」ワクチンによる予防が重要視されています。

使用できるワクチンは2種類

生ワクチン(水痘ワクチン)

もともとは子どもの水ぼうそう予防に使われていたワクチンで、2016年から帯状疱疹にも適応が追加されました。弱毒化した生きたウイルスを使用します。弱毒化したとはいえウイルスが含まれているので、HIVウイルスや抗がん剤治療中など免疫に問題のある方は接種できません。

  • 接種回数: 1回(皮下注射)
  • 発症予防効果: 約50〜60%(60歳以上)
  • 持続期間: 5〜8年で効果は大幅に低下
  • 帯状疱疹後神経痛予防効果: 約67%
  • 費用の目安: 8,000〜10,000円程度(任意接種の場合)

不活化ワクチン(シングリックス)

2020年に日本で発売された組換えアジュバント添加ワクチンです。ウイルスの一部のタンパク質を使用しており、生きたウイルスは含まれていません。

  • 接種回数: 2回(筋肉内注射、2ヶ月以上の間隔をあけて2回)
  • 発症予防効果: 約90%以上(50歳以上)
  • 持続期間:10年で8〜9割程度の効果持続
  • 帯状疱疹後神経痛予防効果: 約90%
  • 費用の目安: 1回あたり約22,000円 × 2回(任意接種の場合)
帯状疱疹ワクチン比較表

※これらのデータは海外での臨床試験を参照しています。これらの試験で使用されたワクチンと日本で流通しているワクチンは製造元が異なりますが、有効性はほぼ同等と考えられています。

2025年4月から ── 任意接種から定期接種へ

帯状疱疹ワクチンは、長らく「任意接種」でした。接種費用は全額自己負担(生ワクチンで約8,000円、シングリックスで約4万円)で、一部の自治体が独自に助成を行っていたものの、全国的な公費助成はありませんでした。費用の高さが接種率の伸び悩みにつながっていたとも指摘されています。

こうした状況が、2025年4月に大きく変わりました。帯状疱疹が予防接種法のB類疾病に位置づけられ、定期接種化されました。

何が変わった? ── 主な変更点

  1. 公費助成が入り、自己負担が軽減
    • 任意接種では全額自己負担でしたが、定期接種化により自治体からの助成が受けられるようになりました。自己負担額は自治体によって異なりますので、各自治体に確認してください。
  2. 対象者が明確に定められた
    • 65歳の方(原則として65歳の誕生日を迎えた年度内)
    • 60〜64歳で重度の免疫傷害がある方(ヒト免疫不全ウイルス感染であるHIV感染が対象)
    • これまでに帯状疱疹ワクチンを接種したことがない方
  3. 生ワクチン・不活化ワクチンの両方が選択可能
  4. 経過措置(2025〜2029年度
    • これは66歳以上の方向けの経過措置です。
    • 制度開始後5年間はその年度内に65・70・75・80・85・90・95・100歳になる方も定期接種の対象となります。これにより66歳以上の方も接種が可能になります。
    • 令和8年度のワクチン接種対象者
令和8年度の帯状疱疹ワクチン接種対象者

B類疾病とは?

帯状疱疹ワクチンの定期接種は「B類疾病」としての扱いです。これはインフルエンザの定期接種と同じ位置づけで、「努力義務なし・希望者が接種する」という仕組みです。A類(子どもの定期接種など)と異なり、接種は強制ではなく費用も一部自己負担が残ります。

50歳以上の方へ

定期接種の対象は上記の通りですが、50歳以上であれば任意接種としてどちらのワクチンも受けることができます。お住まいの自治体によっては独自の助成制度がある場合もあるため、確認してみてください。

よくある質問

Q. 以前に帯状疱疹にかかったことがあっても接種できますか?

接種可能です。厚生労働省も既往のある方への接種を推奨しています。ただ「いつ打てばいいの?」に明確な答えは今のところ出ていませんので、主治医とよく相談して決める必要があります。

Q. 他のワクチンと同時に打てますか?

インフルエンザワクチンや新型コロナワクチン等の不活化ワクチンと同時接種が可能です。ワクチンの種類によっては同時接種できないことがあります。また接種部位は分けて行います。

Q. どちらのワクチンを選べばいいですか?

効果の高さと持続性の面では、シングリックスに優位性があります。ただし、接種回数(2回)、費用などを総合的に考え、かかりつけ医と相談して選びましょう。定期接種で選べるのはどちらか1種類のみです。

予防接種救済制度

予防接種は感染症を予防するために重要なものですが、健康被害(病気になったり傷害が残ったり)が怒ることがああります。極めて稀ではあるものの、副反応による健康被害をなくすことはできないから、救済制度が設けられています。

制度を申し込むときは、予防接種を受けた時に住民票を登録していた市町村に相談ください(こちら)。

参考文献・引用元

本記事は以下の資料を参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【参考ガイドライン・サイト】

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

帯状疱疹はぜひ予防してください。というのも、帯状疱疹は本当に「医者泣かせ」な病気だと私は考えています。帯状疱疹は「痛み」→「赤いぽつぽつ」の経過をたどります。皮疹が出るまで数日かかります。そして「赤いぽつぽつ」が出れば慣れている人なら簡単に診断できます。

ただ多くの患者さんは「痛み」の段階で病院を受診しますが、その時は皮疹が出てなくて本当にわかりません。帯状疱疹かもしれない、ということは必ず伝えるようにしていますが、まれに「あの人帯状疱疹だったんだ」と後になってわかることもあります。これは多くの医師があるあると感じていることだと思います。

ここまでさんざん患者さん目線のメリットを解説しておいて最後は医師目線のお話になってしまいますが、もう一度言います。帯状疱疹はぜひ予防してください。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

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