医師として働きながら、このブログを始めました。開設の理由は概ねプロフィールに書いた通りですが、もう少し内容を分解して肉付けしてお話ししていこうと思います。
ブログを始めた背景には、現場で感じてきた「モヤモヤ」があります。それを説明するためにまずは大学を卒業した学生から(一般的な)一人前の医師になる流れに触れておきます。
肩書きだけを見るなら、3月31日まで「学生」だった人が4月1日になれば「医師」になります。ただ2020年代に入って医師のキャリアも多様化を見せており、私個人をモデルケースにしているのでこれが全てではないことは承知ください。
医師のキャリアを一般企業に例えると
なるべくイメージしやすいように一般企業と比較して説明します。
「新人研修期間の総合職」= 初期研修医(2年間)
いくつもの科を回って自分の志望科(専門)を決める時期です。ただ新人研修期間といっても1年目と2年目の知識経験には雲泥の差があり、特にできる研修医は一戦力として申し分ない働きをしてくれます。
「入社3年目の専門職」= 後期研修医・専攻医(3〜4年間)
自分の志望科(専門)をメインに打ち込んでいく時期です。多くの病院では入院病棟の主治医や外来を担当しており、実働部隊として働くかたわら、専門医資格を取得することになります。
「入社5年目の一人で仕事を回せる人」= 専門医取得
専門医資格を取得し、「●●専門医」と名乗ることができます。いわゆる一人前の医師です。ただ専門医1年目も30年目もここからは同じ土俵に立つことになり、もちろん知識経験の差はあります。そこからはマネジメントをする管理職や研究、留学といった様々なキャリアに分岐していきます。
現場で感じた「モヤモヤ」
システムの構造上、初期研修医は比較的大きな病院で、地域の病院やクリニックから紹介を受けた患者さんを診ることが多いです。後期研修医以降でそういった地域の病院やクリニックでの勤務経験を積んでいきます。
地域医療の現実
特に医療財源が乏しい地域では、その地域の病院やクリニックの役割がとても重要になってきます。
都市部まで自身の足で受診できる若い方はまだしも、高齢化が進むと受診自体が難しくなってきます。また、そういった方はそもそも多数の疾患を持っていることが多く、飲んでいる薬も多いです。
ただ薬に関して話をすると「睡眠薬・便秘薬・痛み止め・湿布」以外の話題が圧倒的に少なく感じます。理由を聞いてみたこともありますが「10年も飲んでる薬だから続けてるんだよ」と日常化してしまっているようです。つまり、自分が何のためにその薬を飲んでいるのか、よくわからないまま何年も続けている方が少なくないのです。これは患者さんだけの問題ではなく、伝えきれていない医療者側の課題でもあると感じています。
情報の非対称性
医師という職業は究極の技術職という点が大きいと思います。学生期間6年間、それ以降も日々知識を蓄えながら働いており、どうしても患者さんとの間にある情報の差がとても大きいです。私も弁護士の方と法律について対等に対話できる気がしません。
こちらも経験談になりますが、自分では理解しやすくしたつもりの説明でも、後から患者さんに聞くと3割程度しか残っていないということがよくありました。相手の理解度を確認して齟齬を埋めてという作業を繰り返していくと一人30分もかかる外来になってしまいます。一般外来の午前枠が20人とかいるととてもじゃないけど足りません(外来を時間内にこなすのも求められているスキルでもありますし)。
「モヤモヤ」からブログへ
これらの「なんかモヤモヤするなあ」は程度の差があれど全ての医師が感じていることと思います。
私は初期研修医、後期研修医序盤はどんどんできることや影響の及ぶ範囲が増えていき、成長を感じる楽しい時期でした。しかし後期研修医中盤からは徐々に「モヤモヤ」が蓄積していきました。
そこから専門医を取得し、現場メインで働いてきました。そのモヤモヤを解消するために自分の言語化能力に目を向けてみたり、試行錯誤をしてきました。
1対1の外来では30分かけても3割しか伝わらない。でもブログなら、一度書いた内容が何人にでも届きます。そこで辿り着いた結論が、私一人のアクションで変えられるものには限界がある以上、1対Nの構造を作り上げるべきだということでした。そこで目をつけたのがブログで、今の形で情報発信をしております。
このブログでは普段の診察では伝えきれない薬や病気の話、医療との付き合い方などを、なるべくわかりやすい言葉で書いていくつもりです。
目標は「私が変化を実感できる」ことです。
圧倒的主観の目標で、達成はいつになるんだと言われると全く分かりません。ただ細くでも長く続けていくつもりはありますので、その時までお付き合いいただければと思います。

