【医師が解説】脂質異常症の薬、全部同じだと思っていませんか?「自分の薬を知る」ためのガイド

山盛りのフライドポテトがあります 脂質異常症

この記事は脂質異常症についての理解を深めていただくことを目的としています。ご自身の判断で薬の服用を中止したり、量を変更したりすることは絶対におやめください。

最終的な治療方針は、必ず主治医とよく相談の上で決めてください。この記事が主治医との会話をより実りあるものにするきっかけになれば嬉しいです。

前回の記事では脂質異常症の基本についてお伝えしました。「LDLコレステロール」「トリグリセリド」など、聞き慣れない言葉も多かったと思います。今回はいよいよ治療の話です。

お薬手帳を開いてみてください。自分が飲んでいる薬がどんな働きをするのか知っておくことで、治療への向き合い方が変わります。

食事療法 — 治療の基本

日米欧のガイドラインはいずれも、生活習慣の改善が治療の根幹であるという点で一致しています。まずは食事のポイントから見ていきましょう。

脂質の「質」を変える

LDL(悪玉)コレステロールを上げる「飽和脂肪酸」(肉の脂身、バターなどの動物性脂肪)を減らし、「不飽和脂肪酸」(魚の油、植物油)に置き換えることが強く推奨されています。また、マーガリンや一部の加工食品に含まれるトランス脂肪酸は極力控える(または避ける)ことが目標です。

積極的に摂りたいもの

  • 野菜、果物、全粒穀物(未精製穀類)、豆類、魚介類
  • 食物繊維はコレステロールの吸収を抑える効果があります

日本ならではの推奨:「The Japan Diet(日本食パターン)」

欧米では「地中海食」や「DASH食」が推奨されていますが、日本のガイドラインでは、日本の食文化をベースにした「日本食パターン」が推奨されています。具体的には、大豆・大豆製品、魚、野菜、海藻、きのこ、果物、未精製穀類(玄米)を取り合わせた減塩の食事です。

地中海食、DASH食、日本食

運動療法 — 動くことの力

ある程度の想像はつくかもしれませんがおおむねは糖尿病と一致する内容となっています。

推奨される運動量

有酸素運動が基本で、ウォーキング、速歩、水泳、サイクリングなどが有効です。中等度以上の運動(少し息が弾む程度の速歩など)を、1日30~40分以上、週に合計150分以上行うことが日米欧で共通して推奨されています。

また筋トレの併用も推奨されています。

「座りすぎ」にも注意

新たなリスクとして、テレビ視聴やデスクワークなどの「座位行動(座りっぱなし)」が動脈硬化リスクを高めることが強調されています。総運動量とは独立して、座っている時間を減らしこまめに立ち上がって動くことが予防効果を持つと明記されています。

またかと思われますが、いきなり全部変える必要はありません。無理なく続けられることが最重要です。

「まずは一つだけできそうなことを試してみる、変えてみる」ことから始めましょう。

薬物療法 — お薬の種類と特徴

生活習慣の改善でも目標値に届かない場合、薬物療法が検討されます。早速種類を見て行こうと思います。

LDLコレステロールを下げる主な薬剤

① スタチン(スタンダード)

① スタチン(スタンダード)
脂質異常症治療の「ベテラン」― 高い実力のあるお薬
仕組み肝臓でのコレステロール合成を阻害し、LDLコレステロールを下げます。
代表的な薬プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン
効果LDLコレステロールを約20〜30%低下させます。
気をつけること・稀に肝障害や筋肉の痛みが起こることがあります
・妊娠中・授乳中の女性には使用できません

② スタチン(ストロング)

② スタチン(ストロング)
より強力に下げる「エース」― スタチンの中でもより強い実力
仕組みスタンダードスタチンと同じ仕組みですが、より強力にLDLコレステロールを低下させます。
代表的な薬アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン
効果LDLコレステロールを約40〜50%低下させます。動脈硬化予防のエビデンスが最も豊富です。
気をつけること・スタンダードスタチンと同様の副作用に注意が必要です

③ エゼチミブ

③ エゼチミブ
小腸からの吸収をブロックする「門番」― コレステロール吸収阻害薬
仕組み小腸からのコレステロール吸収を阻害します。体内に吸収されにくいため比較的安全性が高く、スタチンと併用することで相乗効果を発揮します。
代表的な薬エゼチミブ(ゼチーア®)
効果単独でLDLコレステロールを約18%低下、スタチンとの併用で約35〜50%低下させます。
気をつけること・副作用は少ないですが、ワルファリン(抗凝固薬)の作用を強めることがあるため注意が必要です

トリグリセリド(中性脂肪)を下げる主な薬剤

④ フィブラート系薬

④ フィブラート系薬
中性脂肪を強力に下げる「専門家」― トリグリセリド低下薬
仕組み肝臓でのトリグリセリド合成を抑え分解を促進することで、強力に下げます。
代表的な薬ベザフィブラート、フェノフィブラート
効果TG(中性脂肪)を約30〜50%低下させます。
気をつけること・腎機能が低下している患者さんでは横紋筋融解症のリスクが高まるため注意が必要です
・特に従来のスタチンとの併用には注意を要します

⑤ 選択的PPARαモジュレーター

⑤ 選択的PPARαモジュレーター
フィブラートの「進化版」― 新世代のトリグリセリド低下薬
仕組みフィブラート系薬をより安全に改良した新しい薬剤です。
代表的な薬ペマフィブラート(パルモディア®)
効果トリグリセリドを約43%低下させます。
気をつけること・肝臓や腎臓への影響が少なくスタチンと併用しやすいですが、重度の腎機能障害や胆石がある場合は使えないことがあります

⑥ EPA製剤(n-3系多価不飽和脂肪酸)

⑥ EPA製剤(n-3系多価不飽和脂肪酸)
魚の力を薬にした「天然由来」― 中性脂肪を下げながら血をサラサラに
仕組み魚油の成分であり、中性脂肪を下げる効果があります。また、血をサラサラにする効果があり足の血管が細くなった人に使われることがあります。
代表的な薬イコサペント酸エチル(エパデール®)、オメガ-3脂肪酸エチル(ロトリガ®)
気をつけること・血液をサラサラにするため怪我をした時や鼻血が出た時に血が止まりにくいです

もちろんこれ以外の薬も存在します。これらの薬を組み合わせ目標とする値を目指していくのが治療となります。

参考文献・引用元

本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【参考ガイドライン】

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブログの作成にあたって各国のガイドラインを見ていますが、本当によくできているなと思います。しっかりとした研究に裏打ちされたデータを専門家たちが編集しているので当たり前ではありますが、その作業はとてつもない労力を要しています。1章ごとにとてつもない数の文献が引用されていて私はそのいいところだけをいただいている形になります。大体5年に1回の頻度で更新されていくのでアメリカのものはそろそろ新しいのが出ると思われます。

なかなか一般の方がお目にかかることはないと思いますので、なんとかその情報を少しでもお届けできればと思っています。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

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