【医師が解説】糖尿病の薬、全部同じだと思っていませんか?「自分の薬を知る」ためのガイド

甘そうなマカロンがたくさんあります 糖尿病

この記事は糖尿病についての理解を深めていただくことを目的としています。ご自身の判断で薬の服用を中止したり、量を変更したりすることは絶対におやめください。

最終的な治療方針は、必ず主治医とよく相談の上で決めてください。この記事が主治医との会話をより実りあるものにするきっかけになれば嬉しいです。

お薬手帳を開いてみてください。そこに書かれている薬の名前、何の薬か説明できますか?

「先生にお任せしています」という方が多いのが現実です。もちろん信頼できる主治医にお任せすることは悪いことではありません。でも、自分の薬がどんな仕組みで効いているかを知っておくと、主治医との会話がぐっと充実します。

糖尿病の薬には実はさまざまな種類があり、主要な薬は10種類にも及びます。長い歴史を持つベテランの薬や比較的最近出てきた薬もあり、それぞれ得意分野が異なります。それでは一緒に見ていきましょう。

まずは目標の確認を

治療をするにあたって目標を確認することは大切です。前回の記事でも取り上げましたが大切なのでもう 1回。

HbA1cは「過去2〜3ヶ月の血糖の通信簿」、3つの段階の目標値を設けています。

目標HbA1cどんな人が対象?
血糖正常化を目指す6.0%未満食事・運動だけで達成できる場合、または薬を使っても低血糖などの副作用なく達成できる場合
合併症予防7.0%未満多くの糖尿病患者さんにとっての標準的な目標値
治療強化が難しい場合8.0%未満低血糖のリスクが高い場合や、その他の理由で治療の強化が難しい場合

とりあえずHbA1c 7.0%未満は間違いではありませんが、65歳以上の高齢者はそれより高くなったり、低血糖リスクが低い若い方であれば6.0未満を目指せることもあります。年齢だけでなく、使っている薬や低血糖のリスクによっても目標は変わります。確実なのは主治医に自分の目標値を確認することです。

主治医に聞いてみよう:「私のHbA1cの目標値はいくつですか?」

糖尿病の「クスリ」

糖尿病の薬はどれが「最もよい」というわけではなく、患者さん一人ひとりの状態に合わせて最適なものが選ばれます。薬の種類・特徴を知ることで、「なぜこの薬が処方されているのか」が理解しやすくなります。

気になることや不安なことがあれば、遠慮なく主治医や薬剤師に相談してみてください。治療はあなたと医療チームの共同作業です。

① メトホルミン(ビグアナイド薬)

① メトホルミン(ビグアナイド薬)
糖尿病治療の「ベテラン」
仕組み肝臓が血液中に余分な糖を放出するのを抑えます。さらに、筋肉でのインスリンの効きを良くする働きもあります。
代表的な薬メトグルコ、グリコラン など
強み・歴史が長く、世界中で最も使われている糖尿病薬の一つ
・体重が増えにくい
・薬価が安い(ジェネリックあり)
気をつけること・お腹の不調(下痢、吐き気)が出ることがある → 少量から始めて徐々に増量
・腎臓の機能が低下している方は使えないことがある
・まれに「乳酸アシドーシス」という重い副作用があるため、脱水に注意
シックデイ体調不良で食事や水分が摂れないときは、乳酸アシドーシスのリスクが高まるため休薬が必要です。事前に主治医に対応を確認してください。

② SGLT2阻害薬

② SGLT2阻害薬
余分な糖を尿から出す「排出係」
仕組み腎臓で糖が再吸収されるのをブロックし、余分な糖を尿と一緒に体の外に出します。
代表的な薬フォシーガ、ジャディアンス、カナグル など
強み・体重減少効果がある
・心臓や腎臓を守る効果が証明されている
・血圧を少し下げる効果もある
気をつけること・尿路感染症や性器カンジダ症(特に女性)が起きやすい
・脱水に注意 → 水分をしっかり摂ること
・高齢者ややせ型の方では脱水・ケトアシドーシスに要注意
シックデイ食事が摂れない・嘔吐や下痢があるときは脱水やケトアシドーシスのリスクが高まるため休薬が必要です。事前に主治医に対応を確認してください。

③ GLP-1受容体作動薬

③ GLP-1受容体作動薬
食欲と血糖を同時にコントロールする「司令塔」
仕組み食事をとったときに腸から出るホルモン(インクレチン)の働きを強化し、インスリン分泌を促すと同時に、食欲を抑えます。
代表的な薬オゼンピック、リベルサス、トルリシティ、ビクトーザ など
強み・強い血糖降下作用
・体重減少効果がある
・心臓や腎臓を守る効果が報告されている薬もある
気をつけること・吐き気が出ることがある(特に使い始めの数週間)→ 少量から開始
・注射製剤が多い(リベルサスは飲み薬)
・薬価が高い

④ GIP/GLP-1受容体作動薬

④ GIP/GLP-1受容体作動薬
2つのホルモンに同時に働く「新世代の司令塔」
仕組み③のGLP-1に加えて、GIPというもう一つのインクレチンホルモンの受容体にも作用します。2つのホルモンの働きを同時に強化することで、より強い血糖降下作用と体重減少効果が期待できます。
代表的な薬マンジャロ(チルゼパチド)
強み・GLP-1受容体作動薬よりさらに強い血糖降下作用
・非常に大きな体重減少効果
・心臓や腎臓を守る効果の研究も進行中
気をつけること・吐き気・下痢などの消化器症状が出ることがある → 少量から開始
・注射製剤(週1回)
・薬価が高い
・比較的新しい薬のため、長期的なデータはまだ蓄積中

⑤ DPP-4阻害薬

⑤ DPP-4阻害薬
日本で最も処方されている「穏やかな調整役」
仕組みインスリンを出すホルモン(インクレチン)を分解する酵素をブロックし、インクレチンを長持ちさせます。結果として、食後のインスリン分泌が増えます。
代表的な薬ジャヌビア、エクア、テネリア、トラゼンタ など
強み・低血糖のリスクが低い
・体重に影響しにくい
・飲み薬で1日1回が多く、飲みやすい
・日本で最も処方されている糖尿病薬
気をつけること・心臓や腎臓を守る効果は証明されていない
・GLP-1系ほどの血糖降下作用・体重減少効果はない

⑥ SU薬(スルホニル尿素薬)

⑥ SU薬(スルホニル尿素薬)
膵臓を強く刺激する「ベテランのパワー型」
仕組み膵臓のβ細胞を直接刺激して、インスリンの分泌を増やします。食事の有無に関係なく効くため、効果が強い反面、注意も必要です。
代表的な薬アマリール、グリミクロン など
強み・強い血糖降下作用
・薬価が安い
気をつけること・低血糖のリスクが他の薬より高い → 特に高齢者は要注意
・体重が増えやすい
・現在は少量での使用が推奨されており、第一選択として使われることは少なくなっている
シックデイ食事が摂れないときに通常どおり服用すると低血糖を起こす危険があります。事前に主治医に対応を確認してください。

⑦ イメグリミン

⑦ イメグリミン
日本発の新しいアプローチ「ミトコンドリアに着目した新薬」
仕組み細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの機能を改善し、インスリン分泌を促すとともに、インスリンの効きも良くします。メトホルミンとは異なる新しい作用メカニズムを持つ薬です。
代表的な薬ツイミーグ
強み・インスリンの「分泌」と「効き」の両方にアプローチ
・低血糖のリスクが低い(単独使用時)
・日本で世界に先駆けて承認された新薬(2021年)
気をつけること・消化器症状(下痢、吐き気など)が出ることがある
・長期的な安全性や臓器保護効果についてはまだデータの蓄積中
・他の薬との併用で低血糖リスクが上がる可能性

その他の薬

上記の7種以外にも、以下のような薬が使われることがあります。主治医から処方されている場合は、お薬手帳で確認してみてください。

チアゾリジン薬(ピオグリタゾンなど)
仕組み:脂肪細胞に働きかけてインスリンの効きを改善する薬です。
特徴:脂肪肝(MASLD)の改善効果も報告されており、脂肪肝を合併している患者さんに選ばれることがあります。
注意点:むくみや体重増加が出ることがあり、心不全のある方には使えません。また、女性では骨折リスクが上がる可能性が指摘されています。
グリニド薬(速効型インスリン分泌促進薬)
仕組み:SU薬と似た仕組みで膵臓を刺激しますが、作用が速く短時間で効きます。
特徴:食後の血糖上昇をピンポイントで抑えます。必ず「食直前」に飲む必要がある点が特徴です。飲み忘れた場合、食後に飲んでも効果は期待できません。
注意点:1日3回食直前の服用が必要なため、飲むタイミングの管理が大切です。
代表的な薬:グルファスト、シュアポスト など
α-GI(α-グルコシダーゼ阻害薬)
仕組み:腸での糖の分解を遅らせ、食後の血糖上昇を緩やかにします。
特徴:食後高血糖が目立つ方に適しています。必ず「食直前」に服用します。
注意点:お腹が張る、おならが出やすいといった副作用があります。低血糖時にはブドウ糖で対処する必要があります(砂糖では効果が遅れます)。
代表的な薬:ベイスン、セイブル、グルコバイ など

インスリン注射

インスリンは、膵臓で作られるホルモンそのものを注射で補う治療法です。

1型糖尿病ではインスリンを自分で作れないため、インスリン注射は必須の治療です。2型糖尿病でも、内服薬だけでは血糖が十分に下がらない場合や、膵臓の働きが弱っている場合に使用します。

「インスリン=最終手段」というイメージを持つ方もいますが、これは誤解です。必要な時期に適切にインスリンを使うことで、膵臓を休ませて機能を回復させたり、合併症の進行を防いだりすることができます。早い段階でインスリンを使い始め、血糖が改善した後に内服薬に戻せるケースもあります。

インスリンにも「超速効型」「持効型」「混合型」など複数の種類があり、生活スタイルや血糖のパターンに合わせて選ばれます。

参考文献・引用元

本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

【参考ガイドライン】

日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024

米国糖尿病学会(ADA)『Standards of Care in Diabetes 2026

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

高血圧、糖尿病、脂質異常症の中では糖尿病が一番薬の入れ替わりが起きている分野だと思っています(もちろん他の分野でもありますが)。ここ10-15年で新しい薬が出てきてかなり定着しているなと感じており、私が働き始めたくらいに糖尿病の先生からSGLT2の講義を受けたのを今でも覚えています。今後はさらに新しい薬が出てきてどんどん入れ替わっていくと思うのでその都度知識をアップデートしていこうと思います。

これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

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