前回の記事では「そもそも高血圧って何?」「なぜ家で血圧を測ることが大事なの?」というお話をしました。
今回はその続き。「じゃあ血圧を下げるために何をすればいいの?」という疑問にお答えしていきます。
前回、上の血圧を「5」下げるだけで合併症のリスクが約10%減るというデータを紹介しました。この「5」は薬を使わなくても日々の生活を少し変えるだけで十分に達成できる数字です。
「そんなの分かってるよ」と思った方、安心してください。みんなそう言います。でもこの記事を最後まで読んでいただければ、「まずこれだけやればいいんだ」という具体的な一歩が見えてくるはずです。
①ラーメンのスープを飲み干すと、1日分の塩分が終了する
高血圧の治療において日本のガイドラインも海外のガイドラインもどこを読んでも、一番最初に出てくるのが「減塩」です。
1日の摂取塩分量の目標は 6g以下
(2024年日本人の食塩摂取量の平均値は 9.6g*1)
ただ「6g」と言われても全くピンとこないですよね。
例えば、ラーメンのスープを全部飲み干すとそれだけで約6g。つまり1杯で1日分がなくなります。日本人の平均的な塩分摂取量は約10gですから、今の食事から約4割カットする必要がある計算になります。しかし、醤油や味噌をよく使う日本食でこれを達成するのは簡単ではありませんが、ちょっとしたコツで近づくことはできます。
味がしない食事は続かない。だから「塩の代わり」を見つけよう
「一生、味気ない食事を続けるのか…」と思うかもしれません。でも、減塩のコツは塩を減らすことではなく、「塩の代わり」を見つけることです。
レモンや酢の酸味、生姜やにんにくの香り、かつお出汁のうまみ。こういった塩以外の味を上手に使えば、塩分が少なくても十分においしい食事は作れます。
いきなり全部は変えなくて大丈夫です。まずは「醤油をかける前に一口食べてみる」。これだけで十分なスタートです。
②塩分を「控える」だけじゃ足りない。「出す」味方を増やそう
カリウムというミネラルをご存知ですか?カリウムは、体の中で余分な塩分(ナトリウム)を外に出してくれる働きを持っています。いわば「体内の塩分お掃除係」です。
ここで一つ注意点があります。塩分を控えるために食事全体を質素にしてしまうと、カリウムの摂取量まで一緒に減ってしまうことがあります。塩分を「控える」努力と同時に、塩分を「出す」味方を意識して増やすことが大切です。
| 食品カテゴリ | おすすめの食材 |
| 野菜 | ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、かぼちゃ |
| 果物 | バナナ、アボカド、メロン、キウイ |
| 海藻類 | わかめ、昆布、ひじき |
| 芋・豆類 | サツマイモ、里芋、大豆製品(納豆など) |

難しく考えなくて大丈夫です。「いつもの食卓に野菜の小鉢を1皿足す」、あるいは「おやつをスナック菓子からバナナやナッツに変えてみる」を試してみるのはいかがでしょうか。
※ 注意:健康診断で「腎臓の数値(クレアチニン、eGFRなど)」を指摘されたことがある方は、カリウムの摂りすぎが体に負担をかけることがあります。自己判断せず、必ず主治医に相談してください。
③体重を「少しだけ」落とすと、血圧も「少しだけ」下がる
肥満は血圧が上がる大きな原因の一つです。目標はBMI 25以下。BMIと言われてもよく分からない方も多いと思うので、身長ごとの目安を書いておきます。
- 身長150cmの方 = 56kg以下を目標に
- 身長160cmの方 = 64kg以下を目標に
- 身長170cmの方 = 72kg以下を目標に
「そんなに痩せられないよ…」と思った方、大丈夫です。いきなり理想の体重を目指す必要はありません。今の体重から3〜5%落とすだけでも血圧への効果があるという報告があります。70kgの方であれば、まず2〜3.5kg減を目標にするイメージです。
④「会話はできるけど、歌えない」くらいが、ちょうどいい運動
高血圧の方に推奨されている運動は、息が少し上がる程度の有酸素運動を、できれば毎日30分以上です。ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなどが当てはまります。
強さの目安は、「会話はできるけど、歌えない」くらい。これが「中等度の運動」にあたります。
毎日30分が難しい方は、10分を3回に分けてもかまいません。通勤でひと駅分歩く、エレベーターをやめて階段にする。こうした日常の中のちょっとした運動を積み重ねるだけで十分です。
⑤お酒はほどほどに。じゃあほどほどってどれくらい?
「お酒は健康にいい」という話を聞いたことがあるかもしれません。確かに少量であれば血管に良い面もありますが、飲みすぎると血圧は確実に上がります。
1日の上限の目安はこのくらいです。
ビール中瓶1本 = 日本酒1合 = 焼酎半合 = ウイスキーダブル1杯 = ワイン2杯
女性はこの半分くらいが目安になります。そして、週に2日は「休肝日」を設けることも大事です。毎日の晩酌が習慣になっている方は、いきなりゼロにする必要はありません。まずは「週に1日だけ飲まない日を作る」から始めてみてください。
⑥たばこと高血圧は「最悪のコンビ」。加熱式も例外じゃない
たばこは血管の内側を傷つけて動脈硬化(血管が硬くなること)を進ませてしまいます。
高血圧とたばこは、どちらか片方だけでも危険ですが、両方が重なるとリスクがかけ算のように跳ね上がります。
「紙たばこから加熱式たばこに変えたから大丈夫」と考えている方もいらっしゃいますが、加熱式たばこにもニコチンは含まれており、血管への悪影響は変わりません。
「やめたいけど自力では難しい…」という方は、禁煙外来を利用するという方法もあります。自分に合ったやり方を主治医と一緒に見つけていきましょう。
全部いきなりやらなくていい。「1つだけ」選んでみよう
ここまで6つの生活改善をお話ししてきました。全部読んで「こんなにたくさん…」と思った方もいるかもしれません。
でも、全部を一気にやる必要はまったくありません。
まずは自分が一番やりやすそうなもの、できそうなことを1つだけ選んで、2週間だけ試してみてください。
前回の記事で「家庭血圧を毎日測りましょう」とお伝えしましたが、生活改善の効果は家庭血圧の数字にちゃんと表れてきます。そうすることでモチベーションにつながります。まずはできることから始めてみる、を意識してみてください。
参考文献・引用元
本記事は以下のガイドラインを参考に、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
【参考ガイドライン】
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
- 米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)ほか『2025年 成人の高血圧管理ガイドライン』
- 欧州心臓病学会(ESC)ほか『2024年 高血圧管理ガイドライン』
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少し書くか悩んだのですが、お酒に関しての話題を一つ話していこうと思います。実は最近「ほどほどのお酒は健康にいい」が覆され、「理想の飲酒量はゼロ」というデータも出てきています。個人的にはこういう新しいデータをすぐに適用するのは慎重になったほうがいいと考えていますし、これは現時点ではガイドライン外の情報で、2025年の日本のガイドラインもブログの記載通りでした。こちらに関しては常に情報を新しいものにアップデートしていこうと思います。
これからも一緒に学んでいきましょう。それではまた次回。

